【私の感動した師の背中の美しさとは・・】

美しい というと皆さんはどう感じられるだろうか?


外見が美しい

容姿が美しい

立ち居振る舞いが美しい etc・・




私は背中に美しさも宿ると思っている。

後ろ姿ってかなり無防備。。

そこに凛としたものがあると、老若男女を問わず

ため息が出るほど美しく

一朝一夕で築かれたものではないと心打たれる。

その人の生き様というか、生きてきた証というか

そんなものが年齢を重ねれば重ねるほど表れると思う。


私の日本の師とドイツの師が共通していたことがある。

それは、弟子が舞台に立つということは

自分も同じく批判なり評価にさらされると。。


例えば、どなたかの審査員なり先生から

何か批判や弾き方、演奏にクレームなり、

なにか言われれば即、私に(師)に言うようにと言われていた。


これは、言われたことに対して反感が芽生えるからでなく

若い弟子は師から様々なことを学び吸収し

共に作品を仕上げ、本番を迎えるわけで

それに対し、弟子のみに

「どうしてそうするのか?」

「学生でそんな弾き方はないだろう??」

といったことは、弟子が対処できることではないし

師事している人のレッスンや解釈への苦言でもある。


だから、自分たちが知る必要があり

場合によってはその苦言を呈した方に

直接、なぜあなたはそういうことを言うのか?

そういうことは若い弟子ではなく

直接指導している人間に言うべきではないか!

と弟子を守るため、メンタル的な混乱を避けるためでもある。


ドイツ時代、私はトルコ人のオーボエの友人の

卒業試験の伴奏をさせていただいた。


彼女はプライベートでも大きな決断をし

気丈ではあったけど大変な状況だった。

私も本人からも状況を聞き

彼女の師から誰にもレッスンでのやり取りは言わないでほしい。

そして私の師へも彼女の師からその旨伝えられ

レッスンでもメンタル的なところもよろしくという感じ。。

そして私の先生がデュオや室内楽のレッスンの評判も高く

多くの楽器の人たちがクラスのレッスン生と組みレッスンを受けたがった。


卒業試験は海外で行われる国際コンクールと変わらない

曲数を準備しなくてはならない。

それを今日の夜リサイタルをすれば

翌朝、10時ころにはコンチェルトや新曲、

リサイタルで演奏していない時代のものも演奏しなくてはならない

ハードなもの。。


ただただテクニックだけでは乗り越えられない。

師との信頼関係、伴奏者との信頼関係

どんな状況でもやりきる覚悟・・

そう、メンタルやマインドに大きく左右される。


私の師もレッスン中、非常に丁寧に

メンタルもマインドも彼女を温かく包み込んでいた。

大きいお部屋を借りて、ピアノとオーボエのバランスも作り

二人とも大丈夫!私は当日聴けないけど

あなたたちだからできるいいものになっている!

お互いを信じて試験を受けておいで!

と言っていただいた。


試験日当日。

ホール練習にてオーボエの先生が

「バランスのため、ピアノの蓋を半分にしよう」

「先生は必ず全開でとおっしゃいました。

そのためのレッスンも受けたことはご存じのはずです」


しかし、裏方スタッフには蓋は半分でと告げられてしまった・・・

私はスタッフにも全開を打診してみたが

先生にいわれちゃうとね、、ごめんね。。。という感じ。


私自身は少々もやもやしつつも

お互いよい信頼関係の中で演奏でき無事終えた。


この試験に同じクラスのレッスン生が聴きにきてくれていて

翌日のレッスンで私の演奏やリサイタルはどうだった?と

そのレッスン生が聞かれ

「ピアノの蓋がMIYUKIは全開を望んでちゃんと言ったらしいけど

先生が勝手に半分にしてしまって、響きが残念だった。」と報告。


我が師は、それを聞きオーボエの先生のレッスン室へ。

「私は、ピアノの蓋を全開にして、それでオーボエが負けるような

レッスンをしていない。むしろ良さを引き出すものにした。

ましてMIYUKIはホール練で全開で演奏する私のアドヴァイスをあなたに伝えている。

あなたは、私、私のレッスン、弟子を信用していない。

勝手なことをするのなら二度と我がレッスン生はオタクの伴奏はさせない!」

とオーボエのレッスン生がいる前で堂々とおっしゃったそうだ。

そうだ。。というのは、後から私は聞いたから。


私も先生のレッスン終わりに顔を出し

詳細を伝えようとしたら

ウィンクしながら、

「すでに上記のことをいってきたわ〜〜〜!

よく全開にしたいと最後まで伝えたわね。

同じことがあったら二度とあのクラスの伴奏は

うちのクラスのレッスン生にはさせないから!」


この一件を知った我々レッスン生たちは(先生のいないところで)

「先生、カッコイイ〜〜〜〜〜!!!!」


後日、オーボエの先生に呼び出され

「◯◯(師の名前)から叱られたよ。

悪かったねえ・・・

◯◯にも君にも今回よくしてもらって感謝している。

◯◯が素晴らしいレッスンをしてくれたのに申し訳ないことをした。

今後もよろしくね!」

と、こちらもウィンクであった。。


そしてオーボエの他のレッスン生たちからも

顔を合わせた時に、やっぱりうちの先生が悪かったよね。

先生が怒るのは無理ないよ、ごめんね〜〜、

また、機会があったら一緒にやろうね!と。。

その後このクラスのいろんな人と演奏させていただきました^^


長くなってしまったけど、

たかが蓋の全開や半開で騒ぐこと?

と思う人もいるかもしれない。

だけど、響きを創っていくことは本当に繊細な作業だ。

そして、その先生のこだわりもある。


レッスン生にはソロだろうが室内楽であろうが

よい演奏をしてほしいことには変わりはない。


この事件?で

我が師がどれだけ真剣にどれだけ厳しくも愛情を持ち

信念を持ってレッスン、接していただいているかということが

心に響き身にしみて頭が下がった。

そしてこの師に出逢え、レッスンを受けられる自分は

幸せ者だなあと。


その後ろ姿はとても凛として美しくて眩しくて・・・

ありがたさで一杯。。


その時、師というものはこうだということを

言葉ではなく行動で教えていただいたように思う。


私も指導する立場となり

時々この背中を思い出す。

自分自身の背中はどうだろう・・ってね。









こだま美由希ピアノ教室・広島市中区

広島市中区にてピアノ教室主宰。ドイツ国立デトモルト音楽大学卒業、ドイツ留学中、ドイツ・イタリアにて演奏活動、広島交響楽団と共演等。音色から情熱と愛を紡ぎだすピアニスト&指導者。 英才教育の一環として子供にピアノや絶対音感を活かせるジュニアクラスや初心者の大人でも基礎から楽しく学び、趣味としてピアノ演奏を学び人生が彩豊かになる道をレクチャーしています。テクニック・こころ・思考力の3つの法則が柱。

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